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いかに自然を取り込むかは健康の大切なテーマ
デジタル社会が進化して、私たちは自然から遠ざかることが当たり前になっています。また、デジタルネイティブという言葉がありますが、デジタルが当たり前な世代に生まれた方々は、デジタルそのものが自然とも言えるかもしれません。この記事で述べる自然は、人間の歴史の中で最も根源的な状態を指します。
健康と自然のシンプルな考え方
『人体六〇〇万年史 上──科学が明かす進化・健康・疾病』の著を持つハーバード大学人類進化生物学教授のダニエル・E・リーバーマンが提唱した健康意識に関する3つの考えは、健康と自然のシンプルなアイデアを与えてくれます。
少なすぎる:古代に豊富なものが、現代では少なすぎる
新しすぎる:古代に存在しないものが、現代で現れた
健康を考えるうえで非常にシンプルになれる思想ですよね。「古代」を「自然」という言葉に置き換えてみても良いでしょう。現代になって豊富になったものや現れたものを適度に受け入れつつ、古代にあって現代では不足しがちなものを取り戻す。
要は、「自然に還る」ことを要所要所で取り入れていくことが健康において大切だということです。
古代と近代の3つのミスマッチ図表
サイエンスライターの鈴木祐さんが『最高の体調』で記した古代と現代の「多すぎる」「少なすぎる」「新しすぎる」の分類も健康を考えるうえで非常に参考になります。
多すぎる | 少なすぎる | 新しすぎる |
---|---|---|
摂取カロリー 精製穀物 アルコール オメガ6脂肪酸 塩分 飽和脂肪酸 満腹感 食事のバリエーション 人口密度 衛生設備 人生の価値観 |
有酸素運動 筋肉を使う運動 睡眠 空腹感 ビタミン ミネラル 食物繊維 タンパク質 オメガ3脂肪酸 自然との触れ合い 有益なバクテリアとの接触 太陽光の摂取量 深い対人コミュニケーション 他人への貢献 |
加工食品 トランス脂肪酸 果糖ブドウ糖液等 公害 人工照明 デジタルデバイス インターネット 慢性的なストレス 化学物質 重金属 処方薬 抗生物質 孤独 仕事へのプレッシャー |
上記の要素だけでなく、ありとあらゆる「多すぎる」「少なすぎる」「新しすぎる」が存在します。自分が気になる分野の健康に対して、本や医師からの情報をもとに、自分自身ならではの独自のリストを作ってみると、現代と古代、現代と自然のバランスを取った行動を取りやすくなります。
自然でどれくらい癒されるの?
マッサージよりも高い自然の効果
2016年にイギリスのダービー大学が行った871名のメタ分析によると、副交感神経の癒し効果指数を示す数字は以下のようになりました。
・マッサージ 0.57
・自然とのふれ合い 0.71
副交感神経は気持ちが安らぐときに働き出す自律神経であることは、皆さんもご存知だと思います。
公園を歩くだけで心の静まりが増大
ヘリオット・ワット大学(スコットランドのエディンバラ)の研究チームが2013年に行った調査では、ショッピングセンター、緑地のある公園、ビジネス街で被験者を歩かせたところ、公園を歩いたときだけ心の静まりが増大し、なおかつ気分の沈み込みや苛立ちの減少が確認できました。
また、クイーンズランド大学が2016年に1538名のオーストラリア人を対象に行った研究では、公園との触れ合いでもうつ病発症リスクの低下、高血圧の肖像改善などが見られました。週1回30分以上の自然との触れ合いを推奨しています。
身近な公園という自然でも私たちの健康は蘇る可能性があるため、より自然な場所へ長めに過ごすことは、健康増進のポイントと言えます。
自然の大気は腸内環境にも良い
腸内細菌の専門家であるロンドン大学のグラハム・ロック博士は、自然の大気には大量の微生物が含まれていて、そうした自然の大気が呼吸器から腸へ入ることによって、腸内環境が良くなると指摘しています。
自然を取り入れる鉄則:デジタルを持ち込まない
デジタル・デトックスのツアーも盛んに行われていますが、私たちが自然で過ごす際は、デジタルをなるべく持ち込まないようにすることが、自然の健康増進効果の恩恵を受ける一番のコツです。
そう考えると、スマホは確実に必要な時以外は持ち込まない、ロッカーなどに預けるなどの対策が必要でしょう。先ほど、公園で過ごすことをオススメしましたが、公演程度の距離であれば、家にスマホを置いていくことができます。
逆に旅行になる方が、スマホを置くことにリスクがあります。緊急時には連絡する手段を持っていたほうがいいですし、道に迷った時には地図アプリなども欲しいでしょう。
だからこそ、デジタルをなるべく避けやすい自然な場所を身近から探すのが一番だと言えます。
2016年セバスチャン・シュワルツ博士の実験
健康的な13忍の男女をドイツの森林公園で3拍4日の自然的な生活を行ってもらいました。
- スマホやパソコンの電子機器はすべて没収
- 朝食は抜く
- 昼食は根菜類とフルーツとナッツでの軽食
- 夜は野菜を中心に加熱調理した肉を食べる
- 睡眠時間を8時間以上に指定
その結果、被験者の内臓脂肪は14.4%改善し、糖尿病のリスクを示すインスリン抵抗性は57.8%も改善しました。上記のような生活を4日連続も続けるのは難しいかもしれませんが、それぐらい自然な生活へ振り切れば、人は健康になれる可能性があるということです。
偽物の自然でも大丈夫!自然を愛する気持ちが大切
自然と過ごすというと、森林浴、海水浴、登山、川下りなどを思い浮かべるかもしれませんが、手軽にできるものとして「公園でのデジタル・デトックス」を先ほどお伝えしましたが、それよりも簡単なものがあります。
それは、自然の写真、もしくは、自然の写真が写った本を眺めるということです。そして、その写真を見ながら、自然を想起しましょう。
アムステルダム自由大学の実験では、自然の写真を5分眺めた後の副交感神経の活性化は、都市の写真を眺めた後の2倍になりました。「世界の絶景」といったようなフレーズで本屋さんにも、自然豊かな写真が詰まった本はたくさんあります。
自然を想起する機会は、「自然に行くことを期待する」という報酬系が活性化する原理が働いているようにも思えます。そう考えると、今まで行った中で大好きになった自然の写真を定期的に眺めてみると良いでしょう。自分だけの自然アルバムを作り、それを持ち歩いて、小休憩の際は、スマホをも持たずに、その写真を眺めることに没頭すると良いかもしれません。
自然の力を自分の生活に取り入れて、ぜひ、健やかな日々を目指してみて下さい。
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