津々浦々とは、
文字自体の意味は小さな港や海岸に至るまでということですが、
会話の中では、全国いたるところという意味になります。
この四文字熟語の「々」はそれぞれ、
津という字が続く、浦という字が続くという場合に使われますが、
「々」という字は単独で使われることはありません。
では「々」という字の読みは何でしょうか。
正解は:この字の”読み”はありません。
という不思議な答えです。
「凸」や「♂」など記号のような文字もありますが、
「凸」の読みは「とつ」、
「♂」の読みは「おす」ということで、
ちゃんとした「読み」があります。
時々の「々」、学問のすゝめの「ゝ」などの文字は、
踊り字と呼ばれる記号の一種で、
主に日本語の表記で使用される約物(特殊記号)です。
漢字のように見えますが、反復記号の一種です。
私たちの暮らしの中でよく使う字で、
意外にその正体を詳しく知らない文字はまだあります。
「〆(しめ)」は日本で作られた和製漢字で、
国字(こくじ)という分類に入ります。
「峠」や「働」も同様です。
メイドインジャパンの漢字「国字」は、
見ても楽しめる字が多いです。
「鰯」保存に弱い魚と書いてイワシ。
では、「俥」という字は、どのような読みなのかご存知でしょうか?
※答えは一番下にあります。
アルファベットと違って漢字の場合、
1文字を書くために複数の線を書く必要があります。
その手間を簡略にするため、
赤裸裸→赤裸々のように同じ字が続くときには、
一字だけを書き、それに続く文字は繰り返しを表す
記号を付け足すことで表現するようになりました。
踊り字の歴史は古く、
紀元前900年頃に書かれた金文(青銅器などに刻まれた文)には、
連続する同じ文字を省略する記述が、既に見られます。
鎌倉時代初期の公家であった藤原定家の更級日記写本にも、
踊り字が使われています。
第二次世界大戦終戦の翌年である1946年(昭和21年)3月、
文部省教科書局調査課国語調査室が
各種の教科書や文書などの国語の表記法を統一し、
その基準を示すために編纂した四編の冊子を出しました。
そのうちの一編は、
「くりかへし符号の使ひ方〔をどり字法〕(案)」でした。
踊り字の使い方の左右されます定められてからすでに半世紀以上が経ちますが、
21世紀の現在でも公用文、学校教育現場で参考にされています。
同の字点と呼ばれる「々」は、
基本的には漢字の後ろにつけて用い、漢字一字を表します。
使用例としては、
「佐佐木」→「佐々木」
「正正堂堂」→「正々堂々」
「一歩一歩」→「一歩々々」
ということになります。
簿記などで「以下は同じ」という表現で、
同じ数字や語句を表すものを、「〃」と書きます。
呼び方は「ノノ点」です。
外国語で用いられる「”」から転化したもので、
イタリア語のDitto、日本語に直すと「同上」という意味です。
「々」や「〃」は音で表せませんので、
パソコンでこれらの字を単独で変換する場合は、
「おなじ」で変換できます。
【文中の問題】「俥」とはどのような意味があるのでしょう?
解答:『人力車』です。
読みは、「くるま」です。
意味は、人を乗せて人がひくものとして作られた車。人力車。
明治時代に町中を疾走していた人力車を彷彿とさせる国字です。
※参考文献:新漢語林第二版 大修館書店
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