貧乏ゆすりとは何か
貧乏ゆすりとは、座っている時などに脚や膝などを無意識もしくは意識的に揺らし続ける動作をいいます。貧乏ゆすりは幼いころからの癖としてついやってしまう方も多く、親や周りの人からは「じっとしていなさい」「行儀が悪い」などと注意されがちです。
あまり印象の良くない癖としておなじみの貧乏ゆすりですが、私たちはなぜ貧乏ゆすりをするのでしょうか。今回は身体や心の健康と、貧乏ゆすりによく似た病気についてのお話です。
身体の健康と貧乏ゆすり
私たちが貧乏ゆすりをする理由は諸説あり、いまだ解明されていません。はじめに身体の健康の面からご紹介します。貧乏ゆすりをする理由とされている身体の健康上の原因は「下肢の血流の滞りを改善するため」です。私たちの体内では、心臓から全身に血液が送られ、また心臓へ返ってきます。人間の身体のうち脚の筋肉、特にふくらはぎは筋肉の収縮によって血液を再び上半身に送り返すポンプのような働きを持っている部位です。長い時間座ったままや立ったままでいるとこのポンプ作用が働かず、脚からの血流が悪くなってしまいます。脚の血流は重力や姿勢の影響により、血行不良に陥りやすいことがしられています。貧乏ゆすりをする理由としては、この血行不良を無意識のうちに解消しようとしているためであるという説が唱えられています。
最近では、一日のうち長い時間を座って過ごすことが健康に悪影響を及ぼすとされ問題視されていますが、このような血行不良が悪影響の一端を担っているのかもしれません。また、下肢の血流の改善は冷え性やむくみ、エコノミークラス症候群、下肢静脈瘤などの予防につながるとして、様々なメディアや学術論文で取り上げられており、当該分野では近年の話題でもあります。
心の健康と貧乏ゆすり
貧乏ゆすりを精神面からみると、緊張や不安、欲求不満など様々なストレスが原因として考えられます。これらを何かしらの方法で解消し、平常通りの自分を保つために貧乏ゆすりをしているという説が心理学では有力なようです。
自身が貧乏ゆすりをしていることに気が付いたときはどんな場面でしょうか。大事な仕事を控えていてプレッシャーを感じている、不安や不満を感じていることがある、嫌なことや気に入らないことが頭を離れないなど、どれも愉快な気持ちではないと思います。人間のみならず動物には強いストレスを感じる環境に置かれたときに無意識に行ってしまう行動があります。これは心理学において「転位行動」と呼ばれ、動物では天敵に遭遇した時や縄張り争いをしている時によくみられると言われています。人間では解決すべき問題への対処がうまくいかず、何らかの形でストレスを発散しようとしているために取る行動です。貧乏ゆすりの他には、意味もなく髪を触ったり、爪を噛むなどが挙げられます。
私たちが貧乏ゆすりをしている人を見かけると、どこか落ち着きがなく、そわそわしているような印象を受けます。もしかするとこのような方々は皆、過度のストレスと戦っている最中なのかもしれません。
貧乏ゆすりの陰に隠れる病気の可能性
貧乏ゆすりとよく似た動作をしてしまう病気があります。レストレスレッグス症候群という病気をご存知でしょうか。あまり聞きなれない名前の病気ですが日本国内では数百万人が罹患し、その症状に悩んでいます。
レストレスレッグス症候群(Restless Legs Syndrome)は、名前の通り休みなく(restless)脚が(legs)動いてしまう疾患です。男性よりも女性に多いと言われ、脚に違和感や不快感を感じるため、脚を動かさずにはいられなくなり、脚を動かしたりさすったりすると症状が和らぎます。また、横になって寝るときや座った時、夕方から夜にかけて症状が現れやすいという特徴があります。一日の間でリラックスしている時間帯に症状が強くなるため、ゆっくり落ち着いて過ごせなかったり、なかなか寝付けず睡眠障害につながりやすく大きなストレスになります。レストレスレッグス症候群の原因は、腎不全や糖尿病、貧血だとされていますが、これらの疾患がどのように脚の不快感をもたらすのかはまだ解明されていません。
レストレスレッグ症候群の患者さんが感じる脚の不快感は、「脚にチクチクするものが触れているようだ」「虫が這っているみたい」などと表現されます。また、脚を動かすことで症状が少し和らぐことから貧乏ゆすりのような動きをしてしまうことがあるようです。脚にただならぬ不快感を感じていたり、貧乏ゆすりをする時間帯が決まっていると自覚している方の中には、本人は貧乏ゆすりだと思っていても、実はレストレスレッグス症候群だったということがあるかもしれません。
まとめ
貧乏ゆすりをする理由としていくつかの学説が唱えられていますが、原因はいまだ解明されていません。今回はその中で有力と言われている説をいくつかご紹介しました。貧乏ゆすりは健康面や精神面など、体や心の見えない部分の状態を反映し、私たちに向けてメッセージを送っているのかもしれません。
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