新米を味わう前に

「秋は…、」という枕詞で、
まず思い浮かぶのは、
「実りの秋」ではないでしょうか?

特に日本の場合、
米を主食とする歴史が、
数千年の永きにわたって続いています。

そのため、ほとんどの祭事は
お米作りと強く結びついています。

お米作りは、啓蟄(けいちつ)頃、
春まだ浅い頃から始まります。

水温む前からよく耕し、
肥料を入れて、
早苗を育てる準備を整えます。

代掻き(しろかき)が終わった田に、
整然と植えられた苗が並んでいる様子は、
桜の花と同様に、
日本人の春の風景と言えます。

苗の成長には、
水の管理が大切です。

水が少なければ根は枯れ、
水が多過ぎれば根は腐る、
長年の経験が必要な仕事です。

また、根をよく張らせるためには、
過不足なく肥料を施し、
病害虫の駆除から畦の雑草刈りにも
気を配らなければなりません。

収穫の時期が近づけば、
気象図を見ながら稲刈りに適した日を
予想します。

田に引く水路を整備する土木技師であり、
機械の手入れができる整備士であり、
稲を観察する植物学者であると同時に、
先の天気を見極める気象予報士でもあります。

美味しいお米を作るためには、
百の仕事をこなさなければなりません。

農家が百姓と呼ばれる所以です。

新米が出回るこれからの時期、
厳しい自然と向き合い、
よく育ててくれたお百姓さんに
思いを馳せて食すれば、
お米は、「格別の秋のごちそう」
と言えるのではないでしょうか。

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