高嶺のビワ

♪♪ ビワはやさしい木の実だから 抱っこし合ってうれている
うすいにじあるろばさんの お耳みたいな葉のかげに ♪♪
(作詞:まどみちお 作曲:磯部俶)

これは、「ビワ」という童謡ですが、ご存知でしょうか?

私にとっては、遠い昔、NHKの「みんなのうた」で耳にして、
とても印象深い歌なのですが、残念ながら、
周囲にはこの歌を知っている人はあまりいません。

近所の庭にあるびわの木に、小さなビワの実が、
まさに歌詞の通り、抱っこし合ってなっているのを見かけました。

頭の中で、この歌が自然に流れて来ます。
『もう、ビワの季節になったのだなあ』と思いながら
スーパーへ行くと、そこにも、ビワが並んでいました。

思わず、手に取ろうとしたのですが…
6個パックで、646円(税込み)、一個100円以上!
値段が目に入ったとたんに、出かかった手は引っ込んでしまいました。

もう一度、目の前にあるビワをじっくり見直してみます。

その名前の由来である楽器の琵琶に似た丸みを帯びた形、
オレンジ色に近い黄色のやさしげな色。
なるほど、近所の庭で見たビワの実と比べると、一回りは大きく、
色も形も美しく整っていて、まるで別物です。

一体、プロのビワはどのように育てられているのでしょうか。

ビワは、他の果樹と違って、11月から1月の冬季に花を咲かせます。

そのため、寒害を受けやすく、
年間の平均気温が15度以上の温暖な地で栽培されます。

そこで、産地も限られ、全国一の生産量を誇る長崎県を筆頭に、
千葉、香川、和歌山、鹿児島、の5県で全国の約7割が占められています。

ビワは、生育旺盛で、たくさんの花をつけ、たくさんの実をつけますが、
そのままでは、実に栄養を取られて、枝葉が成長しないため、
摘蕾、摘花などにより着花制限をしなければなりません。

次に、果実の発育をよくするために、摘果が行われます。

ここでふるいにかけられ、残された実には、袋がかけられます。

そうすることで、擦れ傷や病害虫、雨や強い日光から守られます。

このように、大変な労力をかけて収穫されるビワの実ですが、
とても繊細で、ちょっとしたことで表面の産毛が取れたり、変色したりと傷みやすいのです。

その上、追熟することがなく、長期保存もできないので、
出回る時期もとても短いのです。

それだけ、季節性の高い果物だとも言えます。

こうなると、スーパーに並ぶ美しいビワの実が高いのも仕方がないと納得できますね。

スーパーの実には手が出なくても、ゼリーやジュース、お菓子など
加工品も多く生産されているので、
上品で優しいビワの美味をちょっと違った形で、
味わうことが出来ます。

また、ビワの葉や根、茎、枝、種などに薬効成分が多く含まれ、
病院や病人がいるところにビワの木が植えられていました。

事実、何千年も昔、ビワの木は『大薬王樹』と名付けられており、
奈良時代には、ビワが薬として用いられていた記録も残っていています。

その高い薬効性が、逆説的に物語られているのが興味深いですね。

現在も、健康商品として、ビワの葉のお茶やエッセンス、
種の焼酎漬けなどが生産されています。

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