ロコモ(ロコモティブシンドローム)を理解して寝たきりを防ぐ運動をご紹介

1.ロコモとは何

2.ロコモ(ロコモティブシンドローム)の原因

3.ロコモを早く見つけるためのテスト(チェック方法)

3-1 ロコモテストの3種類

3-2 ロコモの簡易テスト

4.予防するには運動習慣(体操や運動)をつける

5.痛みがあるならストレッチがおすすめです

5-1 筋トレよりも筋肉をゆるませる

5-2 太腿の裏側からお尻の筋肉のストレッチ

5-3 関節の痛みと予防

5-4 マッサージの効果は

6.ながら運動に最適「貧乏ゆすり」

1.ロコモとは何

「ロコモ」は正式には「ロコモティブシンドローム(locomotive syndrome)」と呼びます。日本整形外科学会が2007年に提唱したことばで「運動器症候群」の病気のことです。運動器とは骨や関節、筋肉などのことで、運動器が衰えると「立つ」「歩く」といった移動機能が低下していきます。Locomotiveは「運動」という意味があり「ロコモ」あるいは「ロコモティブ」とも呼ばれていますがここでは「ロコモ」の表現を用います。

日本整形外科学会:https://www.joa.or.jp/public/locomo/locomo_pamphlet_2015.pdf

2.ロコモ(ロコモティブシンドローム)の原因

ロコモの原因は、加齢や生活習慣による運動器の機能低下によるものと、運動器疾患がおきたことで移動機能が低下するものとがあります。両者は関わり合ってココモの原因になっていることも多く、栄養障害も原因の一つにあげられています。前者は一般的にいう老化現象を主な原因になる骨粗鬆症、変形性関節症、変形性脊椎症などの病気や無理な姿勢を強いることからおきます。

運動器疾患がおきたことで移動機能が低下するものには過度のスポーツや事故、肥満などによる運動器(骨や筋肉、関節)への負担を原因とするもので、どちらかといえば若い世代にもおきるロコモの原因です。筋肉量は20~30歳代をピークに減少することから40、50歳代で運動器の衰えを感じる人もいて、運動器障害の入院は50歳以降に多発してきます。平均寿命が延びた分、運動器の障害も増加していますが加齢や生活習慣による運動器障害は徐々に進行することから運動器の低下に気付きにくいとされています。

生活習慣が原因の場合はエレベーターや自動車などの普及や肉体労働の減少といった活動量の低下によるものも含まれています。外出機会の減少、痩せすぎになるような低栄養もロコモの原因と関係しています。ロコモによる腰や膝などの痛みや不調は老化として放置されやすいので注意が必要です。

3.ロコモを早く見つけるためのテスト(チェック方法)

3-1ココモテストの3種類

ロコモを早く見つけるためにロコモ度テストをしてみましょう。ロコモのテストは移動能力を見るものです。骨や筋肉などの変化を定期的にチェックすることをおすすめします。

ロコモテストは3つの種類があります。1つでも該当すればロコモに該当します。インターネットで問診票が紹介されているので挑戦してみると良いでしょう。1つでも該当した場合には整形外科に受診することも必要となります。

・ロコモ度テスト1(立ち上がりテスト): 10~40cmの台に座った状態で両脚、または片脚で立ち上がることができるかどうかをテストします。立ち上がれない場合はロコモに該当します。

・ロコモ度テスト2(ステップテスト) :歩幅を測定して、下肢の筋力やバランス能力、柔軟性などを含めた歩行能力を総合的に評価します。計算した数値で判断します。※下記の表に計算式があります。

・コロモドテスト3(ココモド25)  :1か月間に身体の痛みや日常生活での困難の有無を25項目の質問を5段階で答えていきます。質問票があり、7点以上がロコモに該当します。

3-2ロコモの簡易テスト

ここでは簡易テスト(7つのチェック項目)waveをご紹介します。7つの項目のうち、1つでも当てはまる項目があれば、運動器が衰えているサインになります。

1)片脚立ちで靴下がはけない

2)家の中でつまずいたりすべったりする

3)階段を上るのに手すりが必要である

4)家のやや重い仕事が困難である

5)2kg程度(1Lの牛乳パック2個程度)の買い物をして持ち帰るのが困難である

6)15分くらい続けて歩くことができない

7)横断歩道を青信号で渡り切れない

4.予防するには運動習慣(体操や運動)をつける

ロコモを予防して健康寿命を延ばすには若いころからの運動の習慣と継続がポイントです。運動の強さは運動器(骨・筋肉・関節)に少しの負荷をかける程度の運動です。ロコモーショントレーニング(ロコトレ)として「片足立ち」と「スクワット」の2つの運動が紹介されています。ロコトレにふくらはぎの筋力をつける「ヒールレイズ」と下肢の柔軟性、バランスを保つために使う筋肉をつける「フロントレンジ」を組み合わせるとより効果が上がります。

ヒールレイズ:立位でからだを安定させるために脚を肩幅に開きます。つま先立ちをした後、踵を下す動作を繰り返します。ふくらはぎの筋力アップする運動です。

フロントレンジ:立位から片足を大きく前に1歩踏み出し、その後腰を深く下げる動作をする。

5.痛みがあるならストレッチがおすすめです

5-1筋トレよりも筋肉をゆるませる

ストレッチは、意図的に筋肉や関節を伸ばす運動のことです。筋肉や関節をほぐすことで、こりが改善し、ストレス解消や疲労回復に役立ちます。ストレッチは筋肉や関節を伸ばすことで体の柔軟性を増して、筋肉の温度を上げることで、体温も上がります。準備運動に利用されていますが運動後のクールダウンとしても効果があります。運動障害を予防するためにストレッチが奨励されています。

ストレッチの前後に脳波や自律神経活動を調べた研究では、リラックスした時に現れるα波が増加し、心拍数が低下することが明らかになっています。肩・首のこりや体の冷えの改善、姿勢を矯正する働きも期待できます。深い呼吸をしながらからだを伸ばすと副交感神経がはたらき、気持ちが落ち着き、よく眠れるようになる、疲労回復に良いといったリラクゼーション効果があります。

体幹の筋肉が弱くなると腰や背中に余分の力が入り、筋肉が縮んだ状態がつづくことで筋肉が硬くなって「こり」として痛みがでてきます。硬くなった筋肉を酷使すると運動器の障害につながるので痛みのある場合はストレッチから始めましょう。固まった筋肉をストレッチして筋肉の柔軟性をとりもどすと転倒予防にも役立ちます。

5-1腰と背中のストレッチ

腰と背中のストレッチの方法は仰向けに寝て、片足を両手で抱えてお腹や胸にひきつける、立位の片足立ちの姿勢に似た姿勢をとります。引き寄せた状態で、ゆっくり10秒間数えてから、元に戻します。左右の足を入れ替えて行います。伸ばした足の膝ができるだけ曲がっていないことがポイントです。

5-2太もも(大腿部)の裏側の筋肉からお尻の筋肉のストレッチ

太腿の裏側からお尻の筋肉を伸ばすストレッチの方法は、仰向けに寝て、片脚を股関節が90度になるまであげてゆきます。上げた脚を両手で支えます。ゆっくりと膝からお尻の筋肉が伸びていることを意識できれば良好です。膝が伸びたところでゆっくり10秒間数えてから膝を曲げてもどします。左右の足を入れ替えます。股関節や腰痛のある人はゆっくり、無理のない範囲で伸ばしてください。腰痛の改善効果もあります。

それぞれ、10回ずつ、1日2セット以上できると理想的です。

5-3関節の痛みと予防

腰痛には腹筋を鍛える体操と同時に背筋を鍛える運動が大事です。身体の筋肉は左右、前後あるいは伸展筋と屈曲筋がほどよくバランスをとって骨を支えています。身体にある大きな筋肉や曲げるための筋肉(屈曲筋)は伸ばす筋肉(伸展筋)より強く働くといわれ、からだのバランスをとる運動をしていないと強い筋肉に引っ張られてからだを支える筋肉のバランスを崩す原因となります。

関節の痛みには関節を支えている関節周囲の筋肉を鍛える必要があります。そのあとは腰と背中のストレッチと足の裏側からお尻にかけてのストレッチをしておきます。特に太もも(大腿四頭筋)の筋肉を鍛えることが膝の痛みには良いとされています。

大腿四頭筋を鍛える方法は仰向けの状態で横になり、伸ばした脚を10㎝上程度上げたまま5秒間そのまま停止させた後、もどします。この上下運動を繰り返します。同じような動作は椅子に腰かけてもできます。こたつの中でも膝の下にペットボトルなどを置いて上下させることで同じ効果を得ることがでます。

今度は、膝のストレッチです。椅子に浅く腰かけて、自分の手を膝関節の上、太もも寄りに乗せ、手をゆっくり押して膝の関節の周囲の筋肉を伸ばします。注意点は、背中は真っすぐにしておくことと、伸ばした脚の足首を90度ぐらいに曲げて足先をそらせた、踵で支えてる姿勢で行うことです。

5-4マッサージ

マッサージの効果は血行を良くして固くなった筋肉を柔らかくし、筋肉の緊張をとる効果があります。マッサージによる皮膚刺激はリラクゼーション効果もあってストレスの緩和にも有効です。筋肉疲労の慢性化を防ぐ方法として重宝されています。しかしロコモの改善にはレジスタンス運動が良いとされているのでマッサージのみではロコモを改善する効果は少なく、クールダウンとして行うとと良いでしょう。

6.ながら運動に最適「貧乏ゆすり」

厚生労働省が発表した2010年度「国民生活基礎調査」によると、要支援・要介護になる原因の22.9%は運動器障害によるものです。脳卒中が原因となった割合は21.5%あり、認知症によるものは15.3%で、介護が必要になる原因の1位は運動器障害によるものです。健康寿命と平均寿命との差は男性で約9年、女性は約12年の差がありますが、健康寿命とは健康で過ごすことができる期間をいっているので、平均寿命と健康寿命の差は介護サービスが必要になる期間といえるものです。

ロコモを予防するには運動を実践し継続することですが、運動の必要性を十分に理解できていても、なかなか習慣化するのは難しいのも運動です。そこで無理なく日常生活に組み込むことができる「ながら運動」をおすすめします。ロコモーショントレーニング(ロコトレ)として「片足立ち」と「スクワット」の2つの運動をご紹介していますが、ロコトレは室内でできる運動としてテレビを見ながら実行できるのでお勧めの運動です。それでも気おくれする人に、「ジグリング(貧乏ゆすり)」をお勧めします。ジグリングと呼ばれる運動は貧乏ゆすりのように足先を起点にして踵を上下させるだけの動きです。科学的にも効果があると報告され「ジグリング」と呼ばれている運動です。日常の生活にとり入れやすい運動なので始めてみてはいかがっでしょうか。

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